金曜日, 12月 22, 2006

グリング「虹」@紀伊國屋ホール





グリング一年ぶりの本公演。
そして私も約1年ぶりの東京での観劇。
当時1年間の活動休止を聞いたとき、次回公演はおそらく見られまいと諦めていたのに、まさか再びこの目で見ることが出来ようとは・・・ホント、人生何がどうなるかなんてわからんもんだ。

田舎町の教会を舞台に、市井の人々の生活と、病・人間関係・過去など生活の根底に流れるさまざまな不安、そういったものが丁寧に紡ぎ出され、いい知れぬ感動を呼び起こす。
ウェルメイドの一言で片付けてしまうのは容易いが、この作品はそんな言葉で片付けてしまうのが惜しいと思わせるほど“ウェルメイドの中のウェルメイド”なのだ。
前回の「海賊」が徹底的に人々のリアルによって紡ぎ出されていったのに比べ、今回は少し自由に、より形に捕らわれず、ドラマとして上質なものを目指していったように思う。

クライマックスの、聖美(荻原利映)と夫の広志(杉山文雄)のシーンで、聖美が広志に水を持って行こうとした瞬間。不意に涙が込み上げてきてどうしようもなくなった。
何気ない行為で、特に感動的な言葉があるわけでもない。けれどもその瞬間、彼らが共に過ごしてきた長い年月が突然私の中に生まれた気がしたのだ。そう感じたときには、もう涙が出てしまっていた。
エイズと共に生きることを余儀なくされた広志と、それでも強く生きていこうと励ます聖美。かれらが長い年月をかけて作り上げてきた絆が、“水を汲む”という些細な行為の1つに凝縮されているような気さえした。

前回の「海賊」を見た時にも感じたことだったのだが、グリングの舞台を見ていると、生きとし生けるものへの慈しみのようなものが感じられ、見た後に生きていることがとても素晴らしいことのように感じられてくる。
本当に魅力的な舞台だった。

次回公演は来年2007年6月中旬。また観に来たいところだが・・・札幌⇔東京間はしょっちゅう往復するには遠い距離。果たして見られるのだろうか。